蝦夷に行った
2022/8/12~14にかけて,北海道まで行ってライジングサンロックフェスティバル(RSR)というイベントに参加した。約4年ぶりの音楽ライブだったのですごく楽しく,いろいろ思うところもあったのでつらつらと思い出を書いていこうと思う。ちなみにRSRは1999年から北海道の石狩で毎年行われているフェスで,最終日がオールナイトで日曜の日の出とともに終わるためこんな名前がついたらしい。
ライブはイヤホンで聞く音楽の延長なんてものでは決してなかった。拍手の中,幕袖から演者が出てくるあの瞬間の,身震いする程の期待感。ベースの重低音が内臓にまで響く感じがする。ドラムが叩かれるたびにステージのスピーカーが物理的に振動するのが見える。とにかく,視覚・聴覚・触覚をフルに使って,全身で音楽を堪能できた。劇的で刺激的な体験だった。
この体験をきっかけに変化したことがいくつかある。
一つは,音楽の嗜好の変化だ。気持ちがバンドサウンドに戻ってきた。人の知らないロックバンドを探し,中古のCDをアマゾンで買って聴くことに命を懸けていた中高時代は遠い過去の話で,最近はすっかりヒップホップにお熱だった俺だが,RSRの三日間はバンドサウンドの良さを思い出させてくれた。帰りに札幌から新千歳空港へ向かう電車の中で久しぶりに聞いたナンバーガールは,ゆらゆら帝国は,Pixiesは,あのころと変わらず良かった。ライブをきっかけにクリープハイプにはまった。
昔はまってたバンドを聞き返して「やっぱりいいねぇ」と懐かしむだけではない。20を過ぎたら新しい音楽を聴かなくなるという言説通り,しばらくなりを潜めていた音楽に対する好奇心を,今回の旅行は再び喚起してくれた。昔は「よくわからん」と敬遠していたプログレッシブロックとかに手を(耳を?)伸ばしたり,論文を読むときにアンビエントを聞いちゃったりしている。しばらくの間安定していた音楽の嗜好がまた新しい音をもとめて動き出していて,それに自分でワクワクしている。きっと1,2か月したら落ち着くんだろうが,それは以前のものよりもきっと少し広くて深い。いいねぇ。
あとは,いままでやったことないこと,普段やらないことをやってみたくなった。最後にこんな感じの非日常体験をしたのは,それこそほんとに一年前の立山登山くらいなものだったので,刺激を求めるパッションが完全に死んでいたが,それを復活させてくれたと思う。友達の影響で中国語の勉強を始めちゃって,最近は中国を旅行してるバックパッカーのブログを読んで憧れを掻き立てている。
習慣化してきた生活の中で凝り固まった嗜好とか考えかたを,ちょっとした非日常が揺さぶってくれて,その揺らぎはそのうち止んでどこかに落ち着くんだろう。でもそのゆらぎの中で普段は考えないようなことを考えたり,以前はなかった興味が芽生えるのは楽しいし,ゆらぎが止んだ後のほんの少し変わった自分を考えるといい気持ちになる。すぐやめてしまってもいいので,いろいろ新しいことに手を伸ばして,定期的に脳に刺激を与えていきたい。